発想する会社
本書は、有名なデザインコンサルタント会社のノウハウ・考え方・魅力などが書かれたものである。著者はGM(ジェネラルマネージャー)のトム・ケリー。会社の名前はIDEO(アイデオ)という。
この本には、今でこそ当たり前のように使われている「イノベーション」という単語がたくさん出てくる。もちろん単語だけではなく「イノベーションとは何か?」という事が丁寧に、実例も交えて説明されている。
本書(日本語版)が発行されたのは2002年。原書の発行は2000年である。(約10年前)しかし、そんな時差は感じられない程、今でも為になる内容でいっぱいである。
この本が書店に並ぶころには、電子ブックとしてもこれを読むことができるかもしれない。そのデザインに私たちが強力していることだってありうる。
お手上げである。電子書籍が一般的になって来たのは最近の事だ(と私は思っている)それを10年も前に予測しているとは。
電子書籍は分かりやすい例かもしれないが、IDEOではいろんな分野の未来を知る事ができるそうだ。何となく分かった気になって「イノベーション」と連呼している(私を含めた)多くの人間が読むのには、10年という時差はちょうど良いのかも知れない。
本書を読んで気になった箇所をメモ(引用)してみた。いわゆる「まとめ」という形式ではない。なので、このエントリーだけを読んでも、本書の言わんとしている事はよく分からないと思う。
なぜまとめなかったのか?というと、今、そんな事をしても意味がないから。今の自分に足りない事が本書にはたくさん書かれている。まずは真似でも何でもしてみて、自分なりに「イノベーション」や「発想」といったものと向き合ってみようと思う。その上で本書を再読して、自分の経験や想いと共にまとめができれば、と考えた。
引用は自分が強く共感したところ・大事だと思い、ポイントになりそうだ、と感じた文章を書き出した。(次に本書を読んだ時、どれくらい考えが変わったか?(成長したか)をチェックするために使えるかもしれない、と考えている。)
この文章の近くにはだいたい具体例と共に丁寧な説明があるが、本書を開いて説明を読む前に、「なぜ(引用部分に)こんな事が書かれているか?」と考えてみるのも面白いかもしれない。
P.20
つまり、本当のイノベーションは買い物という行為自体をデザインしなおすことなのだ。
P.21
そのほとんどは、ショッピング・カートについてはなんとも思っていなかった。
そのかわりに、カートを生み出したプロセスについて、もっと知りたがっていたのだ。
P.32
しかし、手術室で見たところ、現在の装置はそんなふうに使われていなかった。理論上はたしかに片手で使用できるようになっていたが、それにはマイケル・ジョーダンくらい大きい手でなければ無理だったのだ。
P.34
しかし、私たちは顧客の身になる以上の事が必要だと思っている。
実際、製品やアイデアについて人にたずねるだけでは不十分だと思う。
P.34
企業は顧客にたずねるべきではない。
P.35
注意深く観察するようになれば、さまざまな洞察が得られ、あらゆる機会が開けてくる。
P.36
新しい経験をしているときには、最新の注意を払うことだ。場合によっては、自分の印象や反応や疑問をノートに書き留めてもいい。
P.38
芸術であれ、科学であれ、テクノロジーであれ、ビジネスであれ、現場のそばにいることによってインスピレーションを得られることがよくある。これがインターネット時代にあってさえ、地理が意味を持つ理由だ。
P.39
新しいアイデアは、見ること、嗅ぐこと、聞くことーつまりその場にいることーから生まれる。
P.42
しかし、何十年ものあいだ、子供用の歯ブラシは大人用の歯ブラシをただ小型にしただけだった。
P.48
意味合いの微妙な違いを察知して解釈し、その裏にある動機やニーズを見抜かなければならない。
P.50
企業は相手の身になっているかどうかを定期的にチェックする必要がある。
P.54
イノベーションを成功させるには、人がつねに「正しい」行動をとるわけではなく、慣れ親しんだものと全く新しいアイデアの間の溝を飛び越えてくれるとはかぎらないと認識する必要がある。
P.57
心臓の弁からスポーツボトルに関する着想が得られるだろうか?
P.60
だからこそ、つねに革新を考え、改良をつづけていかなければならないのだ。そして、その最良の方法は、製品を使用している人びとを観察することである。
P.61
父親の身になって、釣りという遊びを改めてデザインしたのだ。
P.66
ブレインストーミングに関して困った問題は、誰もがそれをすでに実行していると思っていることだ。
P.67
そして、多くの規則をもたないこの会社で、ブレインストーミングの手順と準備については非常にしっかりした考えをもっている。
P.68
また、すぐれたテーマとしては、組織のなんらかの目標に焦点をおいた内向きのものよりも、特定の顧客のニーズやサービスの強化に焦点をおいた外向きのもののほうがよい。
P.75
ブレインストーミングがグループにもたらす効果は他にもある。チームのメンバに輝く機会が与えられるのだ。
P.82
駄目なグループとは、どんなものだろうか。グループの現状を守り、それを存続させることを第一の目標とするグループである。
P.101
志願者は普通、入社が決定するまでに10人以上の社員の面接を受ける。このやりかたは時間がかかるが、結局は価値がある。IDEOに入社するには、多くの社員の心を動かさなければならない。
P.101
何かを成しとげる機会を個人に与えることは重要だと私たちは考えている。誰でもだいたい同等のところから始めて、その後失敗をするチャンスがたくさん与えられている。ーそして輝くためのチャンスも。
P.104
だから私たちは仕事場を人に見学させるのが重要だとしんじているのだ。起きている時間の半分以上を過ごす場所が、部外者にとっても熱気にみちた価値のある場所であれば、自分のチームのメンバーの魂と精神に何をもたらすかを考えてみてほしい。
P.112
よい組織には対立する要素が必要だ。つまり、現状に意義を唱える人である。
P.116
プロトタイプ制作は、問題を解決する方法だ。そして、文化であり言語である。新しい製品やサービス、あるいは特別なプロモーションなど、ほぼすべての物事についてプロトタイプをつくることができる。
P.119
彼はよく「プロトタイプなしで会議に臨んではならない」と言う。
P.119
焦点を定めたプロトタイプ製作は、小さいが重大な問題を一つずつ解決する助けになる。
P.120
短時間のプロトタイプ製作とは、答えを得る前に行動し、一か八かやってみるということだ。多少の失敗をしても、次にそれを正せばいい。
P.120
問題を部分に分け、「他のことをしながら」同時に意思決定をする。
P.126
一枚の写真は一〇〇〇の言葉と同じ価値がある、というのは昔から広く受け入れられている金言だ。ただし、IDEOでは質のよいプロトタイプは一〇〇〇枚の写真と同じ価値があると考えている。
P.126
さまざまな状況で最も力を発揮するプロトタイプは、それ自体が人の心を動かすものだ。すぐれたプロトタイプは単に伝えるだけでない。ー説得するのだ。
P.179
タイトルと本のジャケットに目を走らせるだけで、最新のトレンドについてどれほど多くのことが学べるかを知って驚くはずだ。
P.188
惰性や思い込みによる習慣を乗り越えるには、特に努力して取り組まなければならないということだ。
P.205
ある製品に足りない何かを探してみよう。それは無数のチャンスを見つめているのに等しい。
P.209
あなたの顧客のなかに、腕にあなたのブランドの刺青をいれる人がどれだけいるだろうか?
P.216
目標は店舗をより素敵にすることではない。買い物という経験をよりすばらしいものにすることだ。
P.234
「簡単に使える」はずのソフトウェア・プログラムを使いこなすために、五〇〇ページもあって三五ドルもする解説書が書店にあふれるほど出版されているのはなぜなのか。
P.236
経験を提供して成功させるには、場合によってはやりたいことを控え、あれもこれも盛りこみたくなる気持ちを抑えなくてはならない。
P.237
確立された産業は、提供する時期を迎えている産業でもある。
P.248
型にはまった仕事の繰り返しは、イノベーションの敵である。
P.253
すぐれた企業は、小さな失敗の文化を抱えている。これが私たちのプロトタイプ製作のメソッドの心臓となっている。
P.254
このとき、私たちは何を学んだか?最悪のシナリオを決して無視してはならないということだ。
P.268
お決まりの手順は説得力がないのだ。
P.274
機能のつめこみは製品やサービスの開発および洗練の過程で、いつでも起こりうる。それはイノベーションの敵であり、製品の成形や新しいサービスの公安に携わるチームはいずれも、遅かれ早かれこれと格闘することになる。
P.277
初めて試すような気持ちで、自分の製品やサービスを「運転」してみよう。バージョン2.0にぜひ組みこみたいと思う欠けている機能が見つかるのではないだろうか。
P.277
デザインをシンプルにするのは、明確な指示を与えるようなものだ。
P.278
製品やサービスを洗練していく最初のステップは、多くの機能が必要だという先入見を捨てることだ。
P.278
製品を洗練することは、人気コンテストではない。リスクをおかさなければならないし、それによって離れていく人もいるだろう。
P.279
私たちがしばしば気づくのは、バージョン2.0は機能の整理に理想的な機会になりうるのに、皮肉にもソフトウェア会社はこの時点でつい機能をくわえてしまうことだ。
P.283
純粋に新しいデザインは、その製品がどんなものかという顧客の眼力に挑むだけではないーしばしば、強力会社の眼力をも問うことになるのである。
P.285
建物でもウェブサイトでも、そして製品でも、すぐれたものはそれを利用する人がたやすくそこに至る道をみつけられるように考えられている。どの扉を開けるか、どのボタンをクリックするか、迷う余地は全くない。
P.292
まわりを見まわしてみよう。些細なことで顧客に不快感を与えたり、ちょっとした不安を感じさせていないだろうか?
P.293
数年前にパナソニックが発売したコードレス・ドリルは、非常によく売れた。だが、それは市場で最も先進的な道具だったからではなく、その充電器が他の製品よりもすぐれていたからだ。
P.296
IDEOで働く私たちは好運だ。ここでは、魔法使いにならなくても未来を知ることができる。ー少なくとも近い未来であれば。
P.298
あなたが製品を作る仕事に携わっているのならば、地元の玩具店へ行けば間違いない。私は真面目に言っている。
P.302
しかし私たちの場合は、スタッフのためにコンセプト・プロジェクトをつくる。