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読書 「レスキュー最前線 長野県警察山岳遭難救助隊 」


レスキュー最前線 長野県警察山岳遭難救助隊


書店の登山コーナーで見かけて、思わず買ってしまった本。私自身、友人に誘われて数年前から登山を趣味にしているのだが、幸いなことにまだレスキューのお世話になったことは無い。レスキューを一番身近に感じたのは、登山をテーマにした漫画「岳」を読んだ時くらいのものだ。

「岳」での予備知識があるとは言え、レスキューはとても大変な仕事だということは想像に固くない。この本にはそんなレスキュー隊員の手記、日記が書かれている。

勝手なイメージではあるが、レスキューの目的はとてもシンプルだと思う。
・遭難等のトラブルが発生しないよう、予防する
・トラブルが発生したら、対処する

ただ、目的のシンプルさからか、書かれている内容には類似点が多いと感じた。
・こんなきっかけでレスキュー隊員になった
・こんなトラブル、エピソードがあった
・こんなことにやりがいを感じる
 などなど。

類似点が多いことは、想定の範囲内であった。自分が最も気になったのは、登山者へのメッセージだ。ここ数年で登山人気は高まっている。山ガールなどの言葉もよく耳にするようになった。中には認識の甘い登山者も多いようだ。そんな登山者への要望、アドバイス、苦言が多く書かれているのだ。

基本的にレスキュー隊は山が好きな人が集まっている。そんな方々にとって、山ブームは本来喜ぶべきものだろう。「山の素晴らしさを分かってもらいたい。」「もっとたくさんの人に山に来て欲しい。」という想いは、本を読んでいてひしひしと感じる。しかし、楽しいはずの山も、一歩間違えば大きな危険が伴う。そんな時のレスキュー隊のやりきれない想い、やるせなさには、目を見張るものがあるし、文字通り命を懸けたレスキュー隊員の言葉には大変な重みを感じる

・季節感のない登山者
経験や体力を過信する登山者
メンバーの結束が弱いパーティ
単独登山の根強い人気
結果的には自力で歩けたのに、なぜ「動けない」と一一〇通報をしてきたのか、疑問が残った。
「行けるところまで行きます」と言うのだが、行けなくなったらどうするのだろう。救助を要請するつもりなのだろうか。彼女が行くべきところは、北穂ではなく下山口のはず。
われわれは要請があれば当たり前のように出動していっているが、常に大きなリスクが伴っているということを、登山者の皆さんには理解してもらいたい。
ヘリコプター・レスキューは見た目ほどお手軽ではない。どんな現場であっても多かれ少なかれ危険が伴うものであり、事故も毎年のように起きている。
「救助をお願いします」ではなく「ヘリをお願いします」と言って救助を要請してくる遭難者や、救助されたヘリの中でコクピットの写真を撮ろうとする遭難者には、それがほんとうにやむにやまれぬ救助要請だったのかと問うてみたい。
彼らは、好き好んで雪崩の危険の高い斜面に入り込んでいって、雪崩に巻き込まれる。では、その危険な場所に誰が助けにいくんだ。
救助要請をしてヘリで運ばれていく途中、下に見えた山小屋を指差して「仲間があの小屋にいるんで、ちょっと下ろしてください」と言った遭難者もいたという。遭難者のタイプも十人十色である。


「これは酷い。」と感じるものも多いが、自分に当てはまりそうなものもあったりする(単独登山)。私はこれからも多くの山に行くだろう。その時には、本書のメッセージを思い出し、存分に山を楽しもうと思った。

山が好きな人、「遭難やレスキューなど自分には関係ない」と思っている人にこそ読んでもらいたいと思える一冊でした。